今第19回音楽の友社賞をいただき、心より感謝申し上げます。
今回の受賞は、私どもが創立以来心がけてきた真摯でひたむきな演奏、聴く人々と音楽の喜びや感動をわかちあうオーケストラ活動に対して、評価をいただいたものと思い、楽員一同大きく勇気づけられております。
創立時のことを振り返ってみますと、音楽大学を卒業したばかりの当時の私たちが願っていたのは、納得のできる演奏活動を存分にやってみたいということでした。
そうした思いに駆られて新しいオーケストラを作ったわけですから、音楽面だけでなく楽団運営そのものに直接責任を負う、日本で初めての楽員による自主運営オーケストラとして出発したことは、
ごく自然のなりゆきでした。しかし、演奏はもちろんのこと、コンサートの企画から運営までを私たち自身の知恵と努力でひとつひとつ充実したものにしていくことは、並大抵のことではありませんでした。
それを支えてくださったのが、聴衆の皆さまから寄せられた温かい共感と励ましの声、そして多くの指揮者・作曲家・演奏家の方々からの貴重なアドヴァイスでした。
こうした励ましがなければ、今日の新星日本交響楽団はなかったといっても過言ではありません。なかでも、故山田一雄先生には、指揮者としてばかりでなく、音楽家として生きていくうえで大きな励ましと、オーケストラとしての力量を高めるために、
惜しみないエネルギーを注いでいただきました。今回の受賞を、先生もどんなにお喜びなっておられることかと思います。21世紀を目前にして、いまオーケストラの果たす役割はますます大きなものがあると思っております。
それは、何より心豊かな社会づくりに貢献すると同時に、音楽を通して国際文化交流に寄与することであると確信しております。そのために、私どもは定期演奏会での意欲的な演奏や、日本人作品の積極的な紹介、未来の聴衆を育てる青少年のための音楽教室、
あるいは音楽物語「窓際のトットちゃん」のような親子で楽しめる新しい名曲の創作・普及などの活動を、さらに大きく発展させていきたいと考えております。
また、1989年以来取り組んできたアジア・オセアニアの管弦楽作品を紹介すると〈我が隣人たちの音楽〉などの活動をいっそう発展させ、アジアの一員としてのオーケストラという立場から、
音楽による交流をいちだんと充実したものにしていきたいと考えております。こうしたコンサート活動とともに、数多くの名舞台を支えてきたオペラ・バレエでの演奏にもさらに力を注ぎ、
新たに開場する新国立劇場の舞台をしっかり支えていきたいと考えております。
いまオーケストラに求められているものは、心と技との両面におけるいっそうの充実ではないかと思います。私ども新星日本交響楽団は、熱く燃える情熱と卓抜な技量とがしっかり結びついた演奏を目指し、
さらに素晴らしいオーケストラとなるよう楽団あげて研鑽を積み、光栄ある本賞の栄誉に報いたいと思っております。
最後に、日頃からご協力をいただいております関係者各位の皆様に、心からのお礼を申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。
財団法人 新星日本交響楽団 楽団長 槫松三郎
今回の受賞は、主に自主運営を行ってきた当楽団が26年という短い期間に、他の長い歴史を持つ多くのオーケストラと肩を並べるまでになった成果が対象となったものです。
とくに、本年度は、〝戦後50周年記念、世界の平和に寄せる音楽メッセージ〞として行った『プラハの春』音楽祭をはじめとする、ヨーロッパ公演の成功。
創立以来、力を入れてきた日本人作品の紹介。アジアの作曲家の作品を取り上げ演奏した『我が隣人たちの音楽』、『アジアの伝統・アジアの現代』シリーズ、サントリーホール、芸術劇場での意欲的な自主公演、オペラ、バレエ、テレビなど、年200回の多彩な演奏活動を含め、
当楽団の演奏姿勢と次々に実現してきた新しい企画が授賞対象となったものです。