我が隣人たちの音楽

我が隣人たちの音楽

我が隣人たちの音楽

2013年12月4日、日・ASEAN特別首脳会議が赤坂で開催されたが、日本政府はお互いの文化や伝統を受け入れ知り合うことが地域全体で更なる大きな力を生むと確信し、アジアの国々がともに新しいアジア文化の創造を目指すことを提案、『文化のWA(和・環・輪)プロジェクト~知り合うアジア』を実施することを表明した。その具体的な試みとして外務省が主管する国際交流基金内に「アジアセンター」(2014年~2022年)を立ち上げ、アジア地域内の文化交流促進に力を入れる事になる。それより遡る事1989年、既に新星日響では「創立20周年記念特別演奏会《我が隣人たちの音楽-アジア・オセアニアの管弦楽特集》」をサントリーホールで開催し、その後もシリーズ化により5年間継続していた。新星日響のこの試みは、これまでの日本文化は仏教伝来をはじめアジアの国々からもたらされ独自に発展させたものも多いと考え、今後も『隣人』である日本とアジアの国々を音楽通じて交流・発展させていこうという思いから生まれたものであった。まさに20数年後、日・ASEAN特別首脳会議で発表された方針そのものでは無いだろうか。
作曲家の松下功、音楽学者小村公次、そして楽団長の榑松三郎が中心となり企画を推し進めていったが、既に芸術的水準の高かった中国、韓国、台湾、オーストラリアだけではなく、ベトナムやマレーシア、インドネシア等のこれまであまり知られていなかった諸国の作曲家や演奏者の積極的な起用や、プログラミングをしていった。このアジアの隣人たちの音楽や楽器演奏を紹介する試みは、日本人のアーティスト達にとっても大いなる刺激となり、当時欧米志向が一般的であった聴衆にも一石を投じた。その一方、収支面など興行的には成功したとはいいがたく、経済的な安定を求める楽団運営への影響を危惧する楽員も少なからずおり、開催の必要性についての議論は毎回楽団内で交わされる事となる。
結局この「我が隣人たちの音楽」シリーズでは、1993年の第5回まで続けられ30曲のオーケストラ作品を関連コンサートで52曲の室内楽を紹介したが、その作品を生んだ国はアジア・オセアニア16ヶ国に上る。そして新星日響はそれ以降も実行委員会との共同主催で、規模や形態を変えながら上野の旧奏楽堂を主会場に、アジアとの交流事業を継続していった。「我が隣人たちの音楽は」アジアと日本を結ぶ架け橋としての大きな成果をあげた。

当時出演者より寄せられたメッセージ

齊寳力高(チ ボラク)馬頭琴

私は馬頭琴の演奏に携わるかたわら、諸民族の歴史、文化などに興味を持ち、いろいろな書物などに目を通し、また専門の先生に教えをこうてきました。
そして、モンゴル、朝鮮、日本などの民族は、「アルタイ語族」という一つのグループに属し、民族としてごく近しい関係にあることを知りました。
日本の皆様にモンゴルの音楽がこれほどまでに熱烈に歓迎していただけるのも単なる偶然ではなく、二つの民族に心の奥底に、お互いに共通する何かが存在するからであると考えています。
「アルタイ」とはモンゴル語で「黄金」を意味します。我々には言葉の違い、生活習慣の違いをも乗り越え、すぐにでも理解しあえるごく近しい魂の持ち主なのです。
〝アルタイの諸民族よ、手を取りあい、ともに前進しようではないか!〟

王明君(ワン ミンジュン)中国笛子演奏家

新星日本交響楽団が提唱し、主催している《我が隣人たちの音楽》コンサートも今回で5回目を迎えられ、おめでとうございます。 アジアとその音楽文化は悠久な歴史と伝統を持ち、異なる地域と民族により、様々な音楽が造られました。その独自の素朴な音楽言語、又、鋭い原始的な響きは、非常に魅力的であり、 この豊かな土地から、多くの立派な音楽家が生まれ育ってきました。
今回のコンサートは、中国、香港、日本、台湾等のすばらしい作曲家の作品を集め、又、遥遥内蒙古からきた馬頭琴第一人者である齊寶力高氏の演奏を含め、たいへん期待されるものになるのではないでしょうか?
新星日本交響楽団が、アジアへ視点を持ち、色々な演奏活動をし続けてきましたが、これは日本のオーケストラとしてかつてないような事であり、この画期的な意義を持つ活動は、 歴史にも輝かしい一頁として記されることと思います。それと同時に21世紀に向けて、我が新しいアジア音楽文化が、アジアの人々のふれあいをより一層深め、 又、《ステラ・ノヴァTOKYO》の舞台を通じて、世界にも幅広く活躍できるように期待したいと思います。最後に、コンサートの御成功を心より願っております。

"我が隣人たちの音楽 -アジア・オセアニアの管弦楽特集-"

公演日:1989年9月28日
会場:サントリーホール
曲名 作曲家/国籍 出演者/国籍
交響詩クメナンガン(勝利) ※ トリスティ・クメル/インドネシア 新星日本交響楽団/日本
「解脱」-横笛とオーケストラのための協奏曲 石井眞木/日本 外山雄三(指揮)/日本
サン・ミュージック Ⅰ 〇 ピーター・スカルソープ/オーストラリア 朱睴(指揮)/シンガポール
二胡とオーケストラのための協奏曲"惜別" ※ 載宏威/中国 辰巳明子(Vn)/日本
尹伊桑 尹伊桑/韓国 芝祐靖(横笛)/日本
姜建華(二胡)/中国

※世界初演 〇日本初演

我が隣人たちの音楽Vol.2

公演日:1990年9月11日
会場:サントリーホール
曲名 作曲家/国籍 出演者/国籍
アンカ 〇 チナリー・ウング/カンボジア 鄭載東/韓国
交響曲『三つのオ隠喩』 〇 金炳坤/韓国 高関健/日本
ナレーター(テノール)と小オーケストラのための「独楽吟」 〇 ジャック・ボディ/ニュージーランド 錦織健(Ten)/日本
ピアノと管弦楽のための主題と変奏 〇 松平頼則/日本 高橋アキ(Pf)/日本
交響曲第3番 陳永華/香港 陳永華/香港

※世界初演 〇日本初演

我が隣人たちの音楽Vol.3

公演日:1991年10月23日
会場:東京芸術劇場
曲名 作曲家/国籍 出演者/国籍
筝とオーケストラのための「暗香」 〇 羅忠鎔/中国 袁方/中国
音詩「楓橋夜泊」 〇 徐振民/中国 外山雄三(指揮)/日本
ピアノと管弦楽のための「時の糸」Ⅱ 松下功/日本 金堅(中国筝)/中国
オーケストラのための「巫」 〇 李萬芳/韓国 土屋律子(Pf)/日本
管弦楽曲「アリラン」 〇 キム・ヨンギー/北朝鮮 安達さおり(Sop)/日本

※世界初演 〇日本初演

我が隣人たちの音楽Vol.4

公演日:1992年11月20日
会場:東京芸術劇場
曲名 作曲家/国籍 出演者/国籍
「タイム・スペース」-2群の管弦楽のための 〇 ラモン・タガヨ・サントス/フィリピン フランシスコ・フェリチアーノ/フィリピン
「ル・コン」、「トロン・コム」 〇 グェン・シン/ヴェトナム 沼尻竜典/日本
ダーマチャクラ 〇 ナロングリット・ダーマブトラ/タイ ホー・チャク・チ(一弦琴)/ヴェトナム
「結婚」-女声合唱と管弦楽のためのダンス・ドラマ 〇 ラサク・アプドゥル・アジズ/マレーシア 宮田耕八朗(尺八)/日本
「ジェスチャーズ」-オーボエと管弦楽のための 〇 ヴァレリー・ロス/マレーシア 福田輝久(尺八)/日本
「轉」-二本の尺八と管弦楽のための 入野義朗/日本 新星日響合唱団/日本

※世界初演 〇日本初演

我が隣人たちの音楽Vol.5

公演日:1993年10月20日
会場:東京芸術劇場
曲名 作曲家/国籍 出演者/国籍
「形影」 〇 曾葉發/香港 葉詠詩/香港
「そしてその夜が来る」(1986) 〇 潘香龍/台湾 外山雄三(指揮)/日本
「エナン」 〇 デビット・ヤング/オーストラリア リン・ユーチン(Sop)/台湾
母に棒し歌、北風の歌 〇 齊寳力高/中国 齊寳力高(馬頭琴)/中国
「チェロ協奏曲」(1985) 〇 瞿小松/中国 服部誠(Vc)

※世界初演 〇日本初演