東京都施設料値上げ反対運動

東京都施設料値上げ反対運動

東京都施設料値上げ反対運動

 1995年4月、「世界都市博覧会」の中止を公約に掲げた青島幸雄が都知事に当選した。 そして知事就任後、翌年3月の開催まで1年を切った5月に公約通り「世界都市博覧会」の中止発表がされた。バブル経済の崩壊からの脱却を図るために、東京臨海副都市の開発を前都知事が推し進めていたが、「都市博」中止によりこれが頓挫した上、発生した多額の賠償金で、都の財政が圧迫されることとなる。 こうして毎年5,000億円近い財源不足が見込まれる事態になった中、1996年11月東京都は、「東京都財政健全化計画」を策定する。これは、都が施行する現状のあらゆる制度を見直し、3年間かけて財源不足を解消するという計画であった。その中に、「受益者負担」の原則のもと、公共施設の利用料金の見直しが盛り込まれていた。

 当時新星日本交響楽団の専務理事・楽団長であった榑松三郎は、ある新聞社のインタビューでこの事実を知ることになる。 この改正が実現することになれば、オーケストラにとって年間2,000万円近くの経費膨れ上がり、その影響は死活を左右することになる。 そして何よりも恐れたのは、東京都での事例に全国の自治体が追従し、国内全体の文化芸術活動が逼迫されるという事態だった。 その業界全体の活性化を阻む大きな動きに対し危機感を抱いた榑松は、急遽日本オーケストラ連盟を中心としたネットワークを形成し、業界一丸となっての反対運動を繰り広げていった。 この迅速な行動に「自ら切り拓く」という、創設時からの新星日響のDNAを垣間見ることができる。

東京都「文化施設に原価主義導入」を阻止した歴史的な活動

「東京都文化施設使用料の大幅値上げを許さない芸術・文化の会」副実行委員長
(財)新星日本交響楽団 専務理事・楽団長
槫松三郎

オーケストラから始まった
大きな運動

 私は、1997年の6月中旬、東京都が「財政健全化計画」のなかで受益者負担の適正化のためにこれまで文化・教育施設の施設使用料を実際の原価の2分の1を原価としてきたことを見直し、 平成10年度より原価の100%回収を目的とした「原価主義」の考え方を原則としようとしていることを知りました。これが実施されると私達が定期演奏会やコンサート、オペラなどで使用している東京文化会館や東京芸術劇場の使用料をほぼ2倍、 入場料金によってはそれ以上の値上げをするとんでもないものでした。この計画について6月17日に開かれた(社)日本オーケストラ連盟の首都圏連絡会(N響をはじめ在京の9オーケストラと神奈川フィルによって構成)で報告したところ全員が一様にア然とし 「東京都はいったい何を考えているのか」「信じられない」など口々に憤りの言葉が噴出し、早急に都に対して行動を起こすことが決まりました。
 そして、都議選の最中の6月25日、N響、日フィル、東響、新星日響などの責任者が都庁に集合し都議会各派を回り「今回の値上げ案が実施されると厳しい運営を続けている文化団体にさらに大きな負担を強いることになり、 チケット代値上げなどによって都民の文化享受の機会をせばめる。オーケストラとして今回の値上げ計画に強く反対する」旨の要望書を提出しました。これが今回の運動の最初の行動でした。

広がる運動の輪

 8月14日に東京都は財政健全化計画実施案を発表し、強い姿勢を具体的に打ち出してきました。私達は運動をスピードアップしなくてはこのまま押し切られてしまうと、翌8月15日に知事、都議会各党、教育長へ「要望書」を届けました。
 また、これはオーケストラだけの問題ではない、オペラ、バレエ、演劇など多くの団体に知らせねばと8月20日にPAN(芸術文化振興連絡会議)が呼びかけて「緊急懇談会」を開きました。
 私が都の計画について報告しましたが、参加者の多くはこの事をその日初めて知るという状況でした。この会で値上げ案を阻止するために幅広い団体に呼びかけて早急に実行委員会を作ることが決定しました。
 第一回の実行委員会は9月3日に開かれ、オーケストラなどの演奏団体をはじめ(社)日本クラシック音楽マネジメント協会加盟の音楽事務所、(社)日本作曲家協議会、全国子ども劇場おやこ劇場連絡会、日本青少年音楽団体協議会など14団体によって実行委員会が結成されました。会の名称は「東京都芸術文化施設使用料の大幅値上げを許さない芸術・文化の会」(略称“許さない会”)とし、実行委員長はピアニストの中村紘子さんが引き受けて下さいました。この事はこの運動の「顔」を世の中に明確に打ち出すことになり大変大きな力となりました。

許さない会”実行委員会の構成

実行委員長   中村紘子(ピアニスト)

副実行委員長  槫松三郎(新星日本交響楽団)

実行委員
瓜生正美(日本劇団協議会)          中藤泰雄(ジャパンアーツ)
杉浦啓(オペラ団体協議会)          笠原孝夫(ソティエ音楽工房)
松下功(日本作曲家協議会)          鈴木稀王(PAN)
荒木昭夫(日本児童・青少年演劇団協議会)   高橋武比古(全国演鑑連)
柴田善(全日本舞踊連合)           斉藤康一(日本写真協会)
米川寛(日本青少年音楽団体協議会)      十滝歌喜(日本美術会)
森本真也子(子ども劇場東京都協議会)     植田和成(東京労音)
事務局長    岡山尚幹(日本オーケストラ連盟)
事務局次長   大森厚(子ども劇場東京都協議会)
資料作成 中村牧(日本クラシック音楽マネジメント協会

『芸術そして文化は魂の土壌です』

東京都文化施設使用料大幅値上げを許さない芸術・文化団体の会実行委員長
中村紘子


 これまでの人類の歴史に於いて、芸術そして文化は、しばしば無用なもの二義的なものと考えられてきました。
 芸術は花のようなものです。たしかに花は食べられず、しかもこれを育て花咲かせるにはものすごい手間暇がかかります。
 しかしその一方で私たちは、遥か遠い昔から、「人の生くるはパンのみによるにあらず」、私たちの生きる意味、その充実、その夢を、暮夜ひそかに問い続けてきました。私たちは何のために生きているか....、
 その、魂の豊かさを求める熱いものおもいこそ、激変ただならぬ人類の歴史を通じて、多様で見事な芸術をそして文化を育て花咲かせてきたものでありましょう。

中村紘子実行委員長が
青島幸男都知事に面会

 9月18日には青島幸男都知事に中村紘子実行委員長をはじめ「許さない会」の実行委員らが面会し、知事に直接「要望書」を手渡し値上げ案の撤回をせまりました。その模様はテレビにも大きく報道されました。

「芸術文化都市東京を願うコンサート」開催へ

 “許さない会”では、社会に大きくアピールし世論や都議会を動かすために、都議会が始まる2日前の9月22日に「芸術文化都市東京を願うコンサート」を東京芸術劇場で行うことと署名活動を行うことを決定し、コンサート、署名とそれぞれ役割を分担し短期で成果をあげられるようにしました。コンサートの準備期間が史上最短の18日しかない中で記者会見などマスコミ対策に力を入れました。

マスコミで大きく報道

 「交響楽団が悲鳴」(日経)、「芸術家も爆発だ!」(読売)、「中村紘子さんら抗議の演奏会」(朝日)などと、数多くの新聞やテレビで報道され、また、海外からはメトロポリタン歌劇場の総支配人、 ボリショイ劇場の芸術総監督からも「施設の値上げはチケット代の大幅値上げにつながり、公演は経済的に恵まれた人々だけの芸術になってしまう。」と値上げ反対のメッセージが届きました。
 運動は急速に広まっていきました。

芸術文化都市東京をねがうコンサート 東京芸術劇場

1997年9月22日(月)午後7時開演
出演 中村紘子(ピアノ) 緑川まり(ソプラノ) 吉野直子(ハープ)
   佐久間由美子(フルート) 徳永二男(ヴァイオリン) 吉田浩之(テノール)
指揮 外山雄三 秋山和慶 井上道義
オーケストラ 特別編成オーケストラ
HNK交響楽団 新星日本交響楽団 新日本フィルハーモニー交響楽団 東京交響楽団 東京シティフィルハーモニック管弦楽団 東京フィルハーモニー交響楽団
日本フィルハーモニー交響楽団 読売日本交響楽団
合唱 日本フィルハーモニー協会合唱団有志 新星日響合唱団有志 東響コーラス有志
曲目 ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
   レハール :歌劇「ほほえみの国」から 君こそ我が心のすべて
   プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」から 私の名はミミ
   サラサーテ:チゴイネルワイゼン
   ヴェルディ:歌劇「椿姫」より 乾杯の歌
   チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番第1楽章
   シベリウス:フィンランディア

 コンサートには2000人以上の人々が駆けつけ、会場に入りきれない人が出てしまうという大盛況となりました。外山雄三、秋山和慶、井上道義氏の指揮で在京オケの有志によるオーケストラと合唱団、中村紘子さんの熱のこもったアピールと演奏、そして新星日響理事長 黒柳徹子さんや永六輔さんがかけつけて、「文化の大切さ」「東京都の無謀さ」をユーモアを交えながらも、真剣にアピールしてくれました。東京でこの値上げが通れば全国に波及する。何としても阻止しようという強い願いの込められたコンサートで演奏者と聴衆ひとりひとりの心がつながったとても感動的なものでした。当日のアンケートには「演奏者の熱気に感動し、涙があふれてきた」「芸術は心を育てる空気のようなもの、空気がなければ生きてゆけません」「イチョウ模様のジュウタンを怒りをもって踏みつけながら入場しました」などそれぞれの思いを込めたものが多くよせられました。
 署名も短期間にもかかわらず、当日迄に68.844名も集まり、9月25日に都議会議員長田中晃三氏へ直接手渡しました。コンサートの成功は運動にハズミをつけ、さらに大きく拡がっていきました。

初めての街頭署名活動

 「許さない会」の活動も10月に入りました。実行委員会を月に一度程のペースで開き、その間に都議会各党や都教育庁、財務局長、コミュニティー文化部長へ要望書を提出し、 「値上げが実施されれば我々芸術団体にとっても市民にとっても大きな打撃になり、長年かかって培ってきた文化の土壌を破壊することになる」と、強く要請しました。
 実行委員会では、これまでの都知事との会見や行政側の対応、そして都議会での知事と財務局長の答弁を検討した結果、このままでは「値上げ案」をそのまま押し切られかねないと緊急に全体会を開きました。
 そこで組織体制を整え運動を再構築し、署名の目標も30万から100万にパワーアップして取り組むことにしました。
 署名用紙と「100万署名にご協力下さい」のチラシを10万枚印刷し、東京の活動とともに、子ども劇場の組織などを通じ全国へ署名要請を拡げていきました。
 そして、11月6日には銀座の数寄屋橋公園付近で、中村紘子実行委員長を先頭に100名余が参加して宣伝カーの上で、私自身も街頭宣伝車の上に立ち、銀座を歩く人たちに現状を訴え署名のお願いをしました。
 署名行動を行いました。こうした街頭行動は中村紘子氏をはじめ参加者のほとんどが初めての経験でした。文化団体もこの活動を自身の問題として認識し、宣伝と署名活動に加わり、賛同団体は98団体となりました。
 12月17日に中村紘子実行委員長と多くの実行委員が田中都議会議長に面会し、「東京都に文化施設使用料の大幅値上げをしないことを強く求める陳情書」とともに、追加署名18万と海外からの反対の手紙を手渡し、強く陳情しました。

46万名を超える賛同署名により
値上げ条例案否決!

 署名の輪は全国に拡がり、98年3月までに、東京をはじめ日本各地から46万名の賛同署名が寄せられました。
 こうした運動の広がりやマスコミを通じたアピールを背景に都知事への直接の要請(3回)、都当局や都芸術文化振興議員連盟を窓口にした、都議会への要請や陳情(12回)を繰り返し行いました。そうした粘り強い活動と署名の力によって、 今年(1998年)2月5日に発表された都の予算案では、東京文化会館と東京芸術劇場の使用料のアップは全日使用の場合で平均13%に修正されました。さらに、3月27日の都議会本会議ではすべての会派の反対で値上げを含む条例案は否決となり、 値上げは白紙となりました。このように、6ヶ月に及んだ運動はかつてない大きな成果をおさめ、『許さない会』は当初の目的を全面的に達成することが出来ました。これは、多くの方々の力強いご支援があったからに外ありません。

芸術文化都市東京を創ろうコンサート 東京芸術劇場

1998年4月23日(木)午後7時開演
出演 中村紘子(ピアノ) 足立さつき(ソプラノ) 小林一男(テノール)
   徳永二男(ヴァイオリン) 矢崎明子(琴) 山口五郎(尺八)
   野村良介(狂言) 野村史高(狂言) 江守徹(語り)
指揮 外山雄三 佐藤功太郎 大野和士
オーケストラ 特別編成オーケストラ
   HNK交響楽団 新星日本交響楽団 新日本フィルハーモニー交響楽団 東京交響楽団 東京シティフィルハーモニック管弦楽団 東京都交響楽団
東京フィルハーモニー交響楽団 日本フィルハーモニー交響楽団 読売日本交響楽団
合唱 日本フィルハーモニー協会合唱団有志 新星日響合唱団有志 東響コーラス有志
曲目 ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
   ワーグナー :歌劇「タンホイザー」行進曲
   狂言:柿山伏
   グリーグ:ピアノ協奏曲第1楽章
外山雄三:管弦楽のためのラプソディー
ヴェルディ:歌劇「椿姫」より 乾杯の歌 ほか

 『許さない会』では、この大きな成果を多くの支援者に報告し、感謝するために「芸術文化都市東京を創ろう」コンサートを4月23日に東京芸術劇場で行いました。オーケストラは在京9オケの有志99名、指揮者に外山雄三、佐藤功太郎、大野和士、ソリストには実行委員長の中村紘子(ピアノ)をはじめ、ヴァイオリン徳永二男、ソプラノ足立さつき、テノール小林一男、そして邦楽界から箏、矢﨑明子、尺八、山口五郎(人間国宝)狂言、野村良介、野村史高の各氏、合唱は日本フィル、新星日響、東響の250名の合唱団、当日の受付や裏方にも各オケより30名、そして実行委員合わせて総勢400名のボランティアによって行いました。コンサートはみんなで大きな成果を勝ちとった喜びにあふれた「乾杯のコンサート」となりました。
 当日のアンケートには「おめでとうございます。心から喜びがこみ上げてきます。一人一人の小さな力でも、芸術を愛する力が結集して大きな力となった。それを象徴するかの如く、沢山の団体からなるオーケストラや合唱団そして日本の伝統芸能が咲きほこり、花園のような演奏会でした。」(38歳男性)「皆で声を上げれば政治が変わる。ということがよくわかりました。」(75歳男性)など、喜びの声が多数よせられました。

新たなネットワーク組織へ

 『許さない会』は、これまでの活動の成果と課題をまとめ更に発展させていくために、今後、会の名称を『芸術文化都市東京をつくろう!ネットワーク』として芸術文化豊かな東京の基盤づくりを目指して新たな活動をスタートすることにしました。
 『芸術文化都市東京をつくろう!ネットワーク』は、これまで『許さない会』の活動の中で培ってきた芸術団体や鑑賞団体などの相互のネットワークや議会、行政とのパイプを更に拡げ、 来るべき21世紀を潤いに満ちた心の豊かな社会に少しでも近づけるために活動していきたいと考えております。
「東京都『文化施設に原価主義導入』を阻止した歴史的な活動」
榑松三郎
東京都
反対運動
メディアほか
1995
4月9日 青島幸男、東京都知事に選出される
5月1日 青島都知事、「世界都市博覧会」の中止を発表
7月27日 都財務局、「東京都財政白書」のを発表。今後毎年約4千億円の財源不足を予測
1996
4月17日 都「財政健全化検討委員会第1回」を開催 
11月27日 都「行政改革推進本部第6回会議」で「東京都財政健全化計画」を決定
1997
6月中旬 榑松三郎、「赤旗」紙の取材で、「財政健全化計画」に施設利用料金の大幅値上げが盛り込まれている事を知る
6月17日 日本オーケストラ連絡会に、値上げ問題を提起。同連絡会で反対運動に取組むことを決定
6月25日 同連絡会名で「値上げ反対」の要望書を都議会各派に届ける
7月23日 同連絡会名で、都知事、都教育庁文化課へ要望書を届ける
8月14日 都「行政改革推進本部第8回会議」において「東京都財政健全化計画実施案」が承認される
8月15日 同連絡会名で、都議会各党、都知事、都教育庁へ要望書を届ける
8月29日 「東京都文化施設使用料大幅値上げを許さない会」発足・記者会見
8月29日 『都の文化施設使用料倍増 芸術家も爆発だ 日本オーケストラ連盟など「常識外れ」と講義集会』(読売新聞夕刊)
9月3日 「許さない会」第1回実行委員会
9月3日 『都、音楽ホール値上げへ 交響楽団が悲鳴「市民と文化切り離す」連盟抗議、都は「例外設けず」』(日経新聞)
9月8日 『都文化施設料の大幅値上げは許せない』―主張―(赤旗新聞)
9月11日 第2回実行委員会・記者会見
9月15日 『都がホール使用料金値上げ計画文化団体「はんたーい」合唱 中村紘子さん講義の演奏会』(朝日新聞)
9月18日 都知事へ要請文を直接渡す(中村紘子実行委員長ほか)
9月19日 第3回実行委員会
9月19日 『都ホール値上げ反対 中村紘子さん知事に「歎願」』(朝日新聞東京版)
9月22日 「芸術文化都市東京をねがうコンサート」開催(東京芸術劇場)
9月23日 『コンサートの感想―窓―』(日経新聞)
9月25日 田中晃三都議会議長へ7万人分の反対署名簿を提出(榑松三郎委員ほか)
10月3日 第4回実行委員会
10月14日 都議会各党との懇談(榑松三郎委員ほか)
10月15日 第5回実行委員会
10月21日 都教育庁、都財務局長、コミュニティ文化部長へ要望書を届ける
10月23日 第6回実行委員会、緊急全体総会(組織拡大に伴う新執行部の組織編制)
『公共文化施設の使命って何なのか』(芸術文化振興連絡会議広報紙「ういず」11月号)
『施設利用値上げに反対 芸術文化都市を願うコンサート』(日本音楽著作権協会会報JASRACNOW 11月号)
11月4日 第7回実行委員会
11月5日 『文化施設利用料の大幅値上げ問題』(日本クラシック音楽マネジメント協会広報紙)
11月6日 銀座数屋橋公園付近にて署名運動(中村紘子実行委員長ほか)
11月6日 『値上げ反対 楽団員ら訴え 都のホール使用料』(朝日新聞夕刊)
11月10日 『突然の値上げで』(日本芸能実演家団体協議会広報紙「芸団協」)
11月13日 『後退許さぬ芸術・文化政策』―論点―(読売新聞)
11月19日 『徹子の部屋・中村紘子出演 全国に呼び掛け』―論点―(テレビ朝日)
11月20日 第8回実行委員会
11月27日 田中晃三都議会議長へ6万人分の反対署名簿を提出(榑松三郎副委員長ほか)
11月28日 都芸術文化振興議員連盟第2回懇親会に出席(榑松三郎副委員長ほか)
12月3日 『東京都文化施設使用料値上げ絶対反対』(バンドピープル1月号)
12月4日 『花は食えないが・・・・』(徳島新聞)
12月9日 第9回実行委員会
12月9日 田中晃三都議会議長へ海外からのメッセージと共に18万名分の署名簿を提出(中村紘子委員長ほか)
12月10日 『都のコンサートホール 値上げ方針に米ロから反対』(朝日新聞東京版)
12月10日 『都の文化施設使用料 値上げ中止を要請 中村紘子さんら署名提出』(東京新聞)
12月18日 『文化国家への悲願』アサヒビール会長・経済連副会長 樋口廣太郎氏(東京新聞)
12月22日 『音楽界新時代―いま問われることと今後』(音楽芸術1月号)
12月24日 都議会各派へ陳情、「メッセージ集」を手渡す(中村紘子委員長ほか)
12月30日 『芸術家連盟も陳情を取りまとめ』(美術通信)
1998
1月8日 第10回実行委員会
1月11日 『この人 中村紘子「芸術文化政策後退の一歩を怒る」』(「ういず」)
1月14日 『都美術館使用料大幅値上げやめて下さい』(赤旗新聞)
1月16日 第11回実行委員会
1月16日 都議会各派を廻り緊急要望書を提出(榑松三郎副委員長ほか)
3月17日 都議会「文教委員会」で東京文化会館、芸術劇場の料金値上げを含む条例改正案が審議される
3月20日 この日の「文教委員」会において反対多数で上記条例改正案が否決される
3月27日 都議会「定例会」で、委員会が報告、条例改正案否決が正式決定される
4月23日 「芸術文化都市東京を創ろうコンサート」開催(東京芸術劇場)
 新聞社の取材で、「使用料の値上げ」の計画を知った榑松三郎の呼びかけで始まった「許さない会」は、度重なる陳情や署名活動、コンサートと、怒涛の勢いで反対運動を繰り広げて行った。そして翌年3月の都議会の定例会で、使用料値上げの条例改正案は否決されることになる。
 音楽業界関係者が結束し怒りや不安をエネルギーに変え成し遂げた、9か月の短期間での出来事であった。
 「9月22日のコンサートでは、黒柳徹子さんも駆けつけ『わぁすごい!いつもこんなにお客さんが入ったら良いのにね。』と挨拶。永六輔さんも飛び入りで参加して『青ちゃん(青島幸男都知事)がちゃんとやってくれなくきゃ』と色々言ってたなあ。
 テレ朝の『徹子の部屋』に、なんと中村紘子さんが出演し、『東京都文化施設大幅値上げ反対運動』のことを全国の視聴者に訴えて署名を呼びかけたんだよ。『値上げ』を聞いたときは、このままでは新星日響がつぶてれてしまうと本当に驚いた。
 そして最もおそれたのが、この問題が時流として全国に広まってしまうこと。なんとしてもここで食い止めなければ、と必死だった。業界の仲間に相談したらほとんどの人が賛同し、一緒に闘ってくれた。皆の力が有難かった。」榑松は当時の様子を振り返りこう語った。